私達の教育改革通信
第 107号 2007/7
教育通信ホームページ
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これら3要素のうち、人類がその特長とする知性によって、一部はコントロールできると考えられているのは、(人為が原因の一部を作っている)地球環境問題と、省エネ・集エネ・創エネの技術開発によるエネルギー問題と、適者生存的な競争原理という順であろうか。京都議定書や最近のIPCC(世界気象変動政府間会議、教育通信106号参照)の活動がそれを示唆している。しかし、これは第2のエネルギー問題、特に新エネルギー創出の技術開発と密接に関係している。
その詳細については、ここでは触れないが、例えば、海の保温の良さと森の換気機構(矢吹機構)に学び、10倍集光で太陽エネルギー密度を上げて効率を上げた、「水星と海と森の太陽エネルギー工学」で石油火力より安く電力(水素)を、使う場所でつくることを世界に普及するのがよいと考える。
そうした技術を、多方面の科学技術者の共同作業により解決し、公開シンポジュームを開いて世論に訴える必要がある。文明と人口と世界平和の問題は、政治・経済・社会の問題として、各国及び国際間で討論討議すべきであるが、その討議は、エネルギー問題の将来の見通しが立たないと議論が空回りして結論がまとまらない恐れがある。その意味で、科学技術の分野を越えて広範囲にエネルギー技術を公開する場をつくる必要がある。
この文章を書いていたら、第2回新エネルギー世界展示会(2007.10.10(水)-12(金),幕張メッセ国際展示場)の
太陽熱利用、省エネルギー建築、風力発電、バイオマス、水素・燃料電池、海洋エネルギー、地熱発電、新エネルギーシステム他、の案内が来た。主催の再生可能エネルギー協議会準備委員会については知らないが、まことに有意義な企画であると考える。アカデミックコーナーという新企画もあるようなので、我々も参加できそうである。友人と協力して、水星と海と森の太陽エネルギー工学の原理設計を展示できれば幸いである。
IPCCは、地球温暖化問題に対して最近では一応の合意に達しているようにみえる。安倍晋三首相は、最近、6月の主要国首脳会議に向けて、というより、来年7月のG8先進国洞爺湖サミットにむけて、地球温暖化対策の目標としての政府案「美しい星へのいざない」(Cool Earth 50)を発表したし、少し前には、米国元副大統領アル・ゴアさんが、映画「不都合な真実」を持って日本にも来た。自己中心的な国際間の動きもあるが、それ以外にも、地球温暖化対策に水を差している基本的な問題点が2つある。一つは、温暖化への進行が何時如何なる形で起こり、人類文明の破局にいたるか、予測は極めて困難であり、取り返しのつかない破局に至るより遙か以前に対策を取る必要があることである。その時期は、50年後の所謂石油ピーク(代替エネルギーの方が安くなる)に合わせるようにCO2排出量を取るのが自然と考える人もいる。私見では、それよりもっと早く、20年に取るのが無難であると考える。その理由は、第2問題点とも関係する。第2の問題点は、マイクル・クライトンのSF「恐怖の存在」及び槌田敦「CO2を削減すれば温暖化は防げるのか」(日本物理学会誌2007 vol.62 no.2,p.115)に見られるような、地球平均気温変動と大気中CO2濃度変化との測定との解釈で、一見CO2濃度は必ずしも温暖化の原因なっているとは云えず、複雑系としての気象を知らない人には、むしろCO2濃度の上昇は気温上昇の原因ではなく結果にすぎないと見えることである。クライトンも槌田論文でも、正しい解釈を見抜くだけの力が不足している。
余談になるが、クライトンのSFにジェイムス・ハンセンというアメリカ気象学の大家が温暖化ガスとしてのCO2研究の草分けであることが書かれている。迂闊にも、文献表にあるハンセン論文の共著者に彼の同僚のレイシスと日本人女性の名があるのをみて、初めて気がついたのであるが、ジム・ハンセンこそは、京大宇宙物理にいた故松島訓博士がイリノイ大学教授となりその愛弟子の大学院生2人(ハンセンとレイシス)を修行のため日本に送り込み、彼らが東大天文学教室に半年ほどいたことがあったが、そのジムに間違いない。その頃、私はスペクトル線の吸収が恒星の大気構造にどう影響するかを研究していたし(後にUnno理論とよばれた)、変光星や非動径振動の理論を尾崎さんらと始めていた。ジムが東大天文で何を得て帰ったか知らないが、50年ほど前1960年頃、彼が地球大気構造のいい研究をしたことを、松島さんから聞いたことがあるのをかすかに思い出した。
初期のハンセン理論は完全ではない。クライトンのSF「恐怖の存在」には、ハンセンのCO2温暖化効果は30倍もの過剰評価になっているという。槌田論文が評価しているような海と大気間のCO2のやりとりの効果が考慮されていなかったのではないか、と考えられる。つまり、CO2の温室効果は直接的には海との相互作用として、数年といった短期的な変動現象に顕著に現れ、通常いう意味の地球温暖化はそれら短期変動現象の総合として少なくも数10年の平均を時間的にも場所的にも取らないと見えてこない。クライトン及び槌田論文に引用されているデータもそうした長期的視野でみると、ハンセン理論の正しさが分かる。しかし、もっと正確には、短期震動現象も説明し、取り込んだ地球温暖化理論を作る必要がある。恐らく、ハンセン始め世界の気象学者がかなりの合意に達して、IPCCやG8先進国会議の主要議題になっているのであろうが、日本の宇宙地球科学者特に太陽物理学者が、この際、徹底的に太陽・地球システムの動的進化を明らかにして欲しいものである。
地球環境よりも遙かに簡単な太陽にも、太陽5分振動、粒状斑、黒点、白斑、フレアー、などの不規則周期の変動現象があり、地球との相関として氷期に関するミランコヴィッチ・サイクルなどがある。地球は、海・山、砂漠、熱帯雨林、自転軸とその変動などあり、千変万化である。日周変化・年変化など基本的であるが、水・大気・動物植物が変動に関与し、よく知られているものに風雨、台風、地震、季節変動、海洋大循環、エルニーニョ、偏西風の北極振動、など限りない。複雑系としての地球環境では、これらすべてが、直接、間接にCO2温暖化問題と関連するが、特に、台風(ハリケーン)、エルニーニョ現象、北極振動、海洋大循環の持つ振動励起効果(Nonradial Oscillations of Stars;Unno,Osaki,Ando,Saio,ShibahashiでKappa-Delta 機構と名付けた)を明らかにする必要があろう。その理由は、本格的な長期の地球温暖化になる前に、その予兆として、10年以下程度の短期の大変動で、自然の破壊と文明の破壊が同時に起ると考えられからである。
日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会の鈴木晃氏の「オランウータン」(2007/3/31)によれば、ボルネオ島クタイの森のこの20年間の変遷が激しく、その原因となっているのは、熱帯雨林を切り拓いてつくる世界屈指の石炭の露天掘り、日本への最大のLPガス供給のための人口増加、樹木の討伐などによるオランウータンの住む熱帯雨林の一方的な衰退である。その跡地は、バナナ園、椰子園、ゴム園などとなり、熱帯雨林の持つ生産性が完全に無くなる訳ではないが、大気中CO2の吸収、水分の供給、大気の冷却の3大特性は殆ど失われる。水気を失った森は、森林火災が起りやすくなる。この辺りの大気の温暖化は、数年の概周期で起こる太平洋のエルニーニョ現象の震幅増加となり、同時に、台風発生の頻度・規模にも影響が出る。世界のCO2排出量を規制することも重要であるが、熱帯雨林の逆CO2排出量をオランウータンとともに守ることが日本の企業と国際政策に求められている。
温室効果ガスであるCO2との70%は海洋に含まれるというから、地上特に海上の平均気温は、定常状態では、海面からの蒸発と降雨などできまる海面表層水中のCO2含有量とバランスしているであろう。このバランスの崩れは深層海水中のCO2分子の拡散によって回復されるが、それに要する時間は、波による撹拌などの影響がなければ、水深1mでは約1月、100mでは数千年かかる勘定になる。これは、温度と塩度の二重拡散対流の結果、海は下層ほど塩度が高くなり、対流が阻害されるためで、その結果、CO2分子の拡散にかかる時間がエルニーニョのような半規則的気温変動の準周期を決めていると考えられる。準周期を数年とすると、エルニーニョには水深数10m程度の太陽光の届くところまでが主に関与していることになろう。また、ボルネオ熱帯雨林の存在は、第3の(カオス的)変動要因となり、その消長はエルニーニョ振動の震幅を増大することになろう。同様に、海洋に面した都市や工業地帯のCO2排出やヒートアイランド現象が気象変動の振幅を増大している。関心を持つ方々の研究協力が要請される。
周明徳先生は、「新高山天文台」以来教育通信に何回か顔を出されましたが、昨年10月、上記の著作を出される由、お手紙がありました。お母上は3世紀にまたがる(1896-2006)「人瑞」(天命を全うした超長寿者の意)で、昨年6月に逝去され、こうした場合、台湾では、お悔やみというよりおめでたい門出の意味もある様式で葬式が行われるとのことでした。以下は、そのたぐい希な御一生の足跡のまとめです。
@ 1897年、東シナ海に面した淡水街の北西岬の寒村「沙崙」で半農半漁を営む曾家の長女として生まれ、5歳に纏足をさせられ、18歳で周家に嫁いできた。
A 5男5女を産む。初産は女の児(1916年生まれ。現、台北市在住)。90歳誕生記念祝賀会は、この子女10組のカップルは全員参加した。
B 次女出産の年(1918)、纏足をほどいてこの悪習に終止符をうった。
C 台湾沖航空戦の初日(1944.10.12)米軍の空襲によって夫を失う(夫婦は同年の47歳)3名の娘は既に嫁いでいた。
D 70歳の年(1967)、丈夫だった歯が初めて治療を受けた。
E 81歳の年(1978)と84歳の年(1981)、長男・明徳がお供をしてジャンボ機に搭乗し、Maryland/USAにすむ末子・明達を訪問した。明達夫婦はともに気象の学者で現役時代の当時はNASA(米航空宇宙局)で勤めていた。
F 103歳(2000)ころ、日常生活の行動が不自由になったので、近くにあるキリスト教会経営の介護院「護理之家」に入院した。
G 109歳(2006-6-4)天命を全うし、解脱そして昇天した。(年齢は数え年)
周明徳さんは、2007年1月、満82歳で、いわば太平洋戦争の戦前戦後を通じた自分史でもあり台湾史でもある本書を発行した。以前からの姉妹編もあるが、これが完結編である。周さんは、戦前戦後を通じて台湾の気象技官をつとめたベテラン気象学者で、天気図の作成や予報・警報には、(1)無線受信(2)天気図の実況記入(3)天気図の解説と予報を、一人三役の離れ業をやってのけたという。特に、戦後1963年のグロリア台風では、与那国、石垣、宮古三島の気象無線を傍受して、今も歴史に残る正確な台風警報を出した。周さんは、私(海野)より1つ年長かと思われるが、李登輝さんとも友人で良きにつけ悪しきにつけ日本の植民地時代の台湾を公正な目で高い見地からみることのできる類い希な方であり、強い好奇心と研究心で清朝時代から以後の台湾の歴史を研究している。<夕日無限好>、<続・夕日無限好>、<完結編・夕日無限好>、<老いらくの消閑>、<続・老いらくの消閑>、<完結編・老いらくの消閑>がその集大成である。日本文を軸に中文(日本語訳付き)もかなりあり、英文もいくらかある。内容の多くは文化史で、政治史もあり、日本人も知らない(又は忘れている)日本文化史も多々ある。<真白き富士の嶺 緑の江ノ島、
仰ぎ見るも 今は涙、 帰らぬ十二の 雄々しき御霊に 捧げまつる 胸と心; ボートは沈みぬ 千尋の海原、風も浪も 小さき腕に、力も尽き果て 呼ぶ名は父母、恨みは深し 七里ヶ浜; み雪は咽びぬ 風さえ騒ぎて、月も星も 影をひそめ、御霊よ何処に 迷いておわすか、 帰れ早く 母の胸に>の七里ヶ浜哀歌を歌える人は少ないであろう。まして、
曲に合わせて歌える英訳があることを知っている人は何人いるであろうか。しかも、その沈んだボートこそは、かつて日清戦争の海戦で、清国の戦艦「鎮遠」の砲撃で装薬が引火爆発、多くの死傷者を出し、佐々木信綱作詞の軍歌・「勇敢なる水兵」<まだ沈まずや丁遠は>の挿話の場となった日本海軍の旗艦「松島」のボートであったこと、そうした不吉な厄運の象徴を台湾では「白脚蹄」(白い蹄の豚)と呼び、忌み嫌うこと、など周明徳さん以外に記録できる人は恐らく皆無であろう。
二三の文化的論説を表題のみ抜粋すると、「台湾版・文化大革命を再評す(1,2,3)」「頼山陽・題不識庵撃滅機会山図・観賞」「一剣道範士によって狂わされた運命」。剣道五段の範士武藤は、名門台北2中の剣道の時間に正座の習慣のない生徒に30分以上も講話し正座を強制した。耐えきれなかった一生徒が姿勢を崩した途端、竹刀で肩を掛け声もろとも殴打した。その生徒〔翁文通〕は、反射的に飛び上がり「馬鹿野郎」と連呼して学校から逃走した。彼の心の傷は癒えず後に新天地を求め上海に渡り、抗日戦線の地下工作に加わった。武藤の軍国精神主義は、陸軍の古兵が新兵の躾として行う苛めにしばしば見られた偏狭な態度であったが、精神的風土も習慣も違う台湾に自己中心的に押しつけたもので、生徒は勿論、日本のためにも台湾のためにも、本人のためにも、「白脚蹄」であることは間違いない。私の質問に対する答えもある;質問「・・私の小学校のころは『昔、呉鳳という人が・・』という感動的な話が教科書に出ていましたが、あれは何時何処での話だったでしょうか・・」、これに対し、周さんの答えは、「この感動的な故事は今をさる三百年日会昔に、台湾南部の打猫(現嘉義県一帯)で通事・呉鳳が、番人の馘首という凶悪な陋習を途絶えさせようとして、自分の身を犠牲ににした内容である。この故事が植民地時代、日本内地の教科書にも出現した事を、筆者が初めて知り些か驚いた。」
台湾の神話人物 殺身成仁なりし呉鳳
嘉義東堡(竹崎糞箕湖庄)に呉鳳廟がある。廟内に道24年(1844)に掲げた横長の扁額「霊昭北極」がある。呉鳳は24歳のとき選ばれて阿里山番の通事となり、専ら撫番に尽力して番人の信頼するところとなった。当時、阿里山番は性凶暴にして好んで馘首する悪習があった。呉鳳は夙にこの弊風を矯正せんとしたが、番人の頑迷な悪習の移しがたきを嘆き、遂に身を殺してこれを救わんとして自ら赤の衣服と頭巾に変装して説得したが、果たせず、その首を授けた。康煕57年戊戌AD1718であった。ところが呉鳳殺害後、阿里山一帯で空前の瘟疫が猖獗して無数の病死者が出て全番社民は驚愕し、呉鳳殺害の天譴とし、呉鳳の御霊を招降して祀った。爾後この一帯の瘟疫は影をひそめ、馘首の弊風は途絶したという。呉鳳廟の由来である。
植民地時代、第5代台湾総督佐久間佐馬太の扁額、台湾総督府民政長官後藤新平の七言絶句も残っている。善意の植民地政策の感がある。その反発か、<台湾歴史事典>(1997/8、p322)に、「呉鳳、日本人製造出来的神話人物」:日本人のでっち上げとあるが、台湾歴史事典の捏造である。呉鳳廟は阿片戦争の頃にはすでにあったし、呉鳳の事跡を口碑より伝記に記載した「雲林採訪冊」は日本領台前の史書である。しかしこれとは別に、1988/12/31日、嘉義駅前にあった呉鳳像は原住民によって析除された。呉鳳を美化しすぎて、先祖の悪習がいつまでも伝えられることへの原住民の反発であろうか。
こうした日本に関連した台湾の史実が殆ど余すところ無く、細かく記憶され公平な立場で几帳面に生き生きと記述されたものは他にはないであろう。その記述は、気象をつぶさに見る如くユニークである。大学や国会などの図書館での永久保存に値する。
環境問題「現場」の一言 矢吹萬壽
大阪府大の学長を辞める時、秘書の方から、“年をとったらワープロを止めて、ペンで書きなさい”と云われ、それ以来、ペンだけの生活をしております。何回か書き直していると新たな発想も生まれ、仲々原稿が仕上がりませんが、読み心地が良くなるように思われて来ます。
小生が何時も「現場」「現場」と言いますのは、昭和28年10月1日附で、農林省農業技術研究所から、大阪府大、農学部、農環境学講座へ転任する時に、東大農学部の野口弥吉教授と戸刈義次教授から、「矢吹君よ、これからは大阪の農業だよ」と、同じことを言われたのが印象的でした。着任後一週間した時に、府大に呼んで頂いた西内光先生が、“矢吹君、これから南大阪を散歩しよう”と言って、南大阪の農業の現場を案内されました。先ず畑の灌水方法ですが、桶2つを棒の両端に取り付け、棒をかついでいます。よく見ると桶の底には穴があり、そこで散水するのですが、棒を支えている手で、散水口の大きさを調節して散水量を加減していました。次は、海岸に近い処に風車が沢山建っています。風車を用いて手押しポンプを動かして地下水を汲み揚げ、潅水に使っていました。その他、色々な方法で自然エネルギーを得ている作業を見学しました。もう一つ云うと;大阪は蜜柑の生産量は和歌山県以上との事でしたが、蜜柑を2〜3月頃まで、冷蔵した方が美味しいとの事で、各農家は冷蔵室を持っていました。厚い壁の冷蔵室でしたが、壁に床面を横に沿って高さ15cm程の窓を作り、朝の冷気をここから取り入れ、暖気は天井の穴から放出しました。冷気が貯蔵室を満たすと横窓を閉じました。この様に自然エネルギーを有効に利用している技術を見学し「現場」「現場」と考えるようになった次第です。
環境問題になると更に「現場」が重要になります。日本人は思考力不足で、物事を単純に見過ぎているようです。先日もバイオエネルギーの問題で、“植物が固定したエネルギーを使うから、温暖化には関係しない”、と云い、間伐も使えなどと言っていました。然し、伐採、輸送、加工、或はエネルギー化などに多くのエネルギーを必要とします。もっと深く考える必要があります。又、林を何と考えているのでしょう。
日本では土壌侵蝕の被害が少ないのは、照葉樹林を中心に森林が発達し、また、下草があって、雨水が直接土壌面を叩く侵蝕が少ないためです。また、水田が水平な土壌面で、貯水池の役目と共に水を浸透して流去量を少なくしているからです。中近東から北西ヨーロッパ、アフリカなどでは、樹木を切ると照葉樹林などとは異なり、切り株から目のでない種類のもので、直ちに裸地となり土地侵蝕がおこります。しかも耕地は畑です。土壌浸食はギリシャ時代に既に大規模に起こっており、プラトンは「病人の痩せ細った身体のようになっている」と云い、「文明は高くつく」と嘆きました。こうした広大な土地の破壊によりかくちに砂漠が出来、食料生産の低下と地球上の気候を変えてしまいました。日本も昭和32年、池田内閣が国際分業論を唱え、経済に力点を置き、工業製品を輸出し、こめのゆにゅうを始めて減反政策により棚田が放棄されたため、土壌侵蝕が広く起っています。
最近は、たびたび、地球温暖化に関係した会に出席しますが、何れも窓のない部屋でした。以前にスエーデンに出かけましたが、地下室に地上から光を採り入れる様に工夫され、道路と建物との境にガラス窓が造ってありました。最も簡単な「省エネ」は勤務時間ではないでしょうか。北ヨーロッパのイギリス、ドイツ共勤務時間は9時から17時までですが、17時になると、最高の上司以下全員が、1分もたがわず椅子から立ち上がり終業して帰ります。机の上はそのままで、翌日すぐ仕事にかかります。勤務時間中は雑談一つ致しません。年間の勤務時間はドイツで1,650時間ですが、日本は2,250時間ということでしたが、仕事の効率では、日本はドイツの1/3と言う事でした。日本人は仕事中雑談をやっているからです。こんな雑談をしていると限りがありません。雑文を別便でお送りします。不備。 (手紙文より無断抜粋)
古典やベストセラーになって、広く読まれた文学や図書などは、何もここで宣伝する事はない。たまたまここに数冊の本がある。一つは、上記、周明徳「老翁之消磨時間」(完結編)、もう一つはこれも前記の鈴木晃・鈴木南水子「オランウータン」第1刷、日本・インドネシア・オランウータン保護調査会発行、共に孫子に見せてやりたい新刊である。ここで以下に紹介するのは、少し前の発行であるが、春田俊郎「自然界99の謎」、鈴木秀夫「森林の思考・砂漠の思考」、「ヤブさん、藪内正幸・動物画に生きた六十年」の3冊である。何れも、地球環境問題に関連している。
昭和の著名な推理小説作家甲賀三郎のご子息が旧制松本高校の2年先輩にいた。故春田俊郎さんである。奥様の春田静子さんから、日暮里での松高寮歌祭の縁で、お借りしたのが、1冊だけ保存して居られた「続・自然界99の謎」(サンポゥブックス61)である。
ファーブルの昆虫記の10冊分が1冊に入っており、しかもそれが2冊ある。紙数の関係で、章のタイトルしか記載できないが、「自然界99の謎」は:
1.身近な自然の謎 空気−田舎の空気はなぜうまいか/水−循環のメカニズムは? 2.昆虫の謎とつきあう 蚊−蚊柱と蚊のセックス/ミツバチ−自分の巣をどう見分けるか/トンボ−数億年の歴史を持つ奇蹟のトンボ 3.動物の謎とつきあう ウサギ−保護色のメカニズム/サル−ゴリラのペニスの大きさは? 4.植物の謎とつきあう 開花−サクラが春に咲く理由/紅葉−ほんとうは花の排泄行為 5.約束された世界 魚卵−タラコ、カズノコ、スジコの秘密/ネコは原始林で生き残れるか 6.海の謎とつきあう 海流−どこから流れはじめるか/河口−流出する土砂のゆくえ 7.環境の謎とつきあう 太陽−生命を支配する女神/水−摩周湖さえ汚染される 8.怒る自然の謎とつきあう 火山−富士山の爆発する日/地震−巨大なエネルギーの秘密 付録 自然とつきあう雑記帳 採集−昆虫と人間のふれあい。
「続・自然界99の謎」昆虫・動物・海洋生物への招待:は
1.自己防衛の謎−弱肉強食と自然の与えためぐみ 1 敵ばかりの世界―鳥の攻撃、虫の防衛 2 葉に化ける−保護色の驚くべき効果 3 小枝に化ける交尾の時のみごとな変化(へんげ)4 縞模様の意味−キリンやパンダの迷彩色 5 派手な衣装−ハチが鳥に襲われぬわけ 6 嫌われもの−クサくて、まずいヤツら 7 にせもの−ハチの威光を借りるアブ 8 うそも方便―おまえも、おまえもマダラチョウか 9 ごまかし−”九死に一生”を得るメカニズム 10 こけおどし−ヘビの眼がでる「びっくり箱」
2.群れをつくる謎−仲間の掟と滅亡からの脱出
11 毛虫の群れ−なぜ、うじゃうじゃ、うじゃうじゃと
12 群れの群れ−四五〇の卵から千匹の幼虫が生れる謎 13
群れの損得―孤独な毛虫もいる 14
自殺行為―バッタの「死の大非行」の謎 15
烏合の衆−ボスなき社会の命令はだれがするのか 16
けものの群れー弱者には厳しい、その掟 17
サルの群れ−強者を生む“適者生存”の法則 18
ミツバチの群れ−女王を失った集団は、どうなるか 19
離れない群れ−親、子、孫が同棲するイソギンチャク 20
別種の群れ−共生の秘密
興味深い内容が続くが、以下、章名のみ列挙すると、3 食物を得るための謎−目的は手段を選ばない
4 求愛と結婚の謎−愛と暴力の裏に秘められた本能
5 誕生と子育ての謎−厳粛なドラマの始り、そして終わり
6 海の生存競争の謎―攻撃と武器、繰り返される死闘
7 海の動物の怪奇と謎―沈黙の闇で何が始まり終るのか
8 動物の相互関係の謎―大自然に息づくひたむきな生命
9 滅び行く動物たちの謎自然のいたずらか人間の犠牲か
10 文明は人間を進歩させたかー人もまた、ただの動物か
最後の章の一文を抜粋して、最近の教育問題の参考に供したい。
動物行動学者ハーリー・ハーロウ博士の最も熱を入れた研究は動物の親子関係であり、愛情がどう子どもに影響するかということであった。ハーロウは飼育していたサルの群れの中で生まれた子ザルを五十五匹、母親のサルから離し、子どもだけの集団で生活させた。五十五匹の子ザルたちはほかの子ザルと同様に跳びまわり、ふざけて遊んだりして予想通り成長した。ところが思いがけない事態が起こったのである。それは五十五匹のうち一匹の雄も、一匹の雌も性的に成長せず、子供を産むどころか、性欲も示さず、大人になっても全く性行為に無関心だった。そればかりでなく、大人になったこれらのサルは極端に神経質になり、たえずイライラしたり、ノイローゼ症状になった。ほとんどのサルは元気なく、一日中すわったままぼんやりと空を眺めているといった有様だった。(後略)
「ヤブさん」藪内正幸・動物画に生きた六十年
藪内正幸「野鳥の図鑑」福音館書店
甲斐駒のふもと、北杜市白州町サントリーウイスキー工場のすぐ側に藪内正幸美術館がある。ここは、山階鳥類研究所で鳥類の図鑑を、毛筋一本一本をおろそかにしない写実で、つくったことでも知られた“ヤブさん”の美術館である。昨年であったか、奥さんも亡くなられたので、市やサントリーの後援が望まれる。
宝物の原画は、美術館で観賞してもらう以外にないが、上記の小冊子から、一節だけ抜粋して“ヤブさん”の業績を偲ぶ事とする。最近、絶滅した佐渡の朱鷺の復活が、話題になっている。十年あまり前、コウノトリの野生復帰が計画されたが、その記録の一つ、池田啓「コウノトリ大空へ舞え」を抜粋して、その意義とこれに関わった“ヤブさん”の業績を知る縁としたい。
豊岡市、ここでは今、日本の大空から失われてしまったコウノトリを野生に復帰させる作業が進んでいます。このコウノトリを介して、豊岡の仲間達が藪内さんと深い絆ができました。1994年、コウノトリの野生復帰を目指して国際シンポジウムが企画されていました。1960年代半ばから始まったコウノトリ保護活動は、1989年、ハバロフスク地方からの支援を得て、四半世紀ぶりに飼育下でヒナが誕生、順調に個体数も増えて保護活動は活気づいてきました。このシンポジウムは、世界各地からの研究者を呼んで、コウノトリを再び大空へ帰すきっかけとして計画されました。文化調査官としてコウノトリ事業を担当していたある日、地元の事務局から筆者に電話で、ポスターを作りたいが、その絵を藪内さんに頼みたい、それも格安でということでした。忙しい藪内さんに、ほとんどボランテイアでという調子のいい願いなので、いささか躊躇をおぼえました。しかし、私も藪内さんしかいないと思っていたので、電話しました。「ヤブさん、実は・・」。返事は、「うん、いいよ」でした。できあがったイラストは、大きく羽を広げまさに舞い上がらんとする絵柄で、シンポジウムが意とする事をまさにあらわしたものでした。ポスターができあがり、ほっとしていたところにまた地元から電話があり、今度は原画が欲しい、それもただで。さすがに唖然としましたが、その理由は分からなくはありません。せっかく外国からお客さんが来るわけだから、市民参画で運営したいが、予算が足りない。市民はボランテイァで対応するが、少しは活動費が必要だ。そこで、一計を案じ、藪内さんの原画を売りそれを資金にしよう、というものでした。
この虫のいい話にも、ヤブさんは、「うん、いいよ」といってくれたのでした。原画はいずれしかるべき場所に寄贈してもらうという約束で、当時県会議員の中貝豊岡市長の手許に納まりました。藪内さんにはこのシンポジウムに来てもらい、豊岡の人々とも楽しい交歓の機会をもってもらいました。それ以来、地元の仲間たちは何か必要があると「あ、それ藪内さんのイラストを使おうよ」と直接連絡をとり、「うん、いいよ」と了解してもらったそうです。おかげで、豊岡市で見かける多くのコウノトリのグッズには藪内さんのイラストが使われているのです。コウノトリの野生復帰事業が順調に進んだ作業のさなか、野生のコウノトリが豊岡に舞い込んできました。2メートルにもなる羽を広げ悠然と舞う姿に、私は圧倒されました。初めて見るコウノトリの舞い姿は、身体のバランス、風切りの少し白い粉をふいたような黒い色、そして小さな第一第一趾といい、藪内さんが描いたとおりだったことに、更に感動したのです。私が見たコウノトリは、ヤブさんの絵のとおりにとんでいいたのです。
いよいよ来年、飼育下で育ったコウノトリが大空に帰ります。ヤブさん、一緒に見たかったね。
鈴木秀夫「森林の思考・砂漠の思考」
NHKブックス312
以前、教育通信66号に松本健一「砂の文化・石の文化・泥の文化」を論じた事がある。比較文化論である点で、似たところもあるが、本書は30年近く前の出版であるにも関わらず古さを感じさせない。二元論的な表題になっているが、地理学・気候学の裏付けがあり、その意味で多次元思考である。松本氏の文化論と共に、地球環境論として本書の現代的価値が高まっている。
第1章
日本文化の森林的性格
「わかりません」立前と本音またその奥、間違っても教えるドイツ人 日本映画の美しさ 配列のうつくしさ 上からの視点,下からの視点日本の都市、ヨーロッパの都市 日本の学問 東西で違う「学問の自由」「学問の厳しさ」という事 日本人と発見 真理の探究? 職人気質の日本の科学 理論と事実 物事の証明をめぐって 存在の証明が出来ない事 証明一般について 現象の一回性 相対性原理
第2章
変化する森林と砂漠
砂漠の成因 砂漠は動く 砂漠の成因 雨雪の原因 前線帯とは 前線帯と砂漠の分布 風下の砂漠 赤道西風の発見
氷河時代の様相 人類と氷河時代 緑のサハラ 氷河期の高温期 ヒプシサーマル(高温期)ふたたび緑のサハラ
第3章 東西の差を生ぜしめたもの
農耕以前 氷河期と狩人 呪術の世界 狩人の呪術 多神教の時代 飛ぶ矢の力 農耕のはじまり 初期農耕の伝播 神々の時代 一神教の成立 五千年前の乾燥化 主神から唯一神へ イスラエルの嵐の神 ヤハウエの性格 天地創造の概念 砂漠的思想の拡大 インドへの波及 インドにおける一神化 梵我一如の思想 キリスト教と仏教 語り難いということ天地創造と万物流転 円環的世界観と直線的世界観 自力と他力 東と西の間 二大宗教の拡大 二大宗教の変容 現在との関わり
第4章 日本における「砂漠化」の進行
縄文時代 氷河期の終り 縄文時代の森林 弥生時代 農耕のはじまり 水田耕作の拡大 仏教伝来 「論語」の天 仏教による「砂漠化」 親鸞から一遍へ 明治以降 キリスト教の伝来 キリスト教への抵抗と欲求砂漠的な進歩思想 砂漠化への傾斜
第5章
日本の森林とその意味
先史時代の文化圏 現在にある過去 先史時代の植生と文化圏 縄文時代前期 ふたたび寒冷化へ 弥生時代の文化圏 東日本と西日本の違い 川の名の違い HB抗原の分布 血液型の分布 方言の分布 瀬戸内文化圏 溜池の分布 瀬戸内文化圏の飛び地 現在に及ぶ先史時代の森林の影響 酢の利用度の違い 母乳中のPCB 寿命の分布
第6章
砂漠的思考技術としての分布図
分布図で説明する強さ 分析から総合へ 総合における図形の役割 関係の主張に対する半焼の可能性 世界的スケールの分布図 がんの分布図 ヴェルトの農耕伝搬論 食習慣の分布
内容をもっと紹介できるだけの紙数が取れないのが残念である。
環境立国戦略論
大木浩
(手紙からの無断抜粋、「温暖化防止策」論点:読売新聞07/4/25 参照)
最近、地球温暖化の進行について、ふたつの重要な報告書が公表された。一つは英国政府が世界銀行のチーフエコノミストをつとめたニコライ・スターン卿に委嘱して作成し、昨年十一月に公表されたいわゆるスターン・レポートであり、もう一つは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第一作業部会及び第二作業部会が、それぞれ本年一月末と四月六日に公表した第四次報告書である。これらの報告書は、地球温暖化の現象が確実に進行しており、これに対する防止対策がおくれるならば人類社会は甚大な損失を招くであろうと指摘している。独・英両国政府が地球温暖化防止を人類の直面する最重要案件の一つと捉え、世界各国の迅速な行動を訴えている背景には、科学的調査研究の裏付けがあることを忘れてはならない。スターン・レポートは温暖化防止の緊急性を主として経済的視点から解説したものであるが、添付資料も仲々充実しているので専門家の間でも有用性が評価されている。一方、IPCC報告書は今回で四回目の報告書となるが、世界の有力な科学者、研究者を総動員して三ヶ年の時日を費やして作成されたものであり、その重みは国際的に認識されている。
(IPCCについては、教育通信106号、「異常気象」とIPCC第4次報告書について; 及び、本107号、21世紀人類の命運、参照)
最近、気候変動にかかわる科学的予測方法の一つとして、バックキャステイングと云う手法が使われている。過去・現在のデータを延長して将来予測を行うのではなく、将来の特定時点についての目標値を設定し、そこから逆算して今後についての予測を行い、これに対する中長期的な対応措置を考えるのである。スターン・レポートやIPCC第4次報告書もバックキャステイングを活用している。バックキャステイングの特色は、中長期的なせいさくを立てるのに利用しやすい点にあるが、長期的予測に基づいた対策を考えるので、対策は予防的な措置の色彩が濃くなる。コンピューターによるデータ処理能力の飛躍的増大によって、バックキャステイングの推測の精度が高まれば予防措置の必要性とその効用に対する信頼性も大きくなる。何れにしても地球温暖化対策は一過性の問題でなく五十年、百年先までの効果と影響をおよぼすことがらであるだけに、長期的ビジョンの確立が目前の対策と並んで不可欠であることを理解する必要がある。
(バックキャステイングは、例えば、ある会社の1年後の株価を予測しそれを幾らにするかを施策するのに似ている。その為には、その株の毎月の平均株価と変動は勿論、同類会社の株価、石油価格の変動、ドルや円の値段、政変、内戦の影響などあらゆるデータを取り、超多次元の変数空間で主成分解析して、施策を決定し、絶えず変数の取り方を模索しながら、目的の株価と出来るだけ相関の強い少数の主成分によってコントロールするのがよい。地球環境の場合は、気温やCO2は勿論、すべての気象・海洋・地学現象の位置・強度・移動のデータを主成分解析し、異常気象や地球温暖化との相関を調べて、キーとなる温暖化変量を求め、人為でコントロールできる変量で中長期の地球温暖化の制御をする必要がある。異常気象長期気象変動の理論が完全でなく、中には人類未経験の変動もあり、データ数の不足が決定精度上の問題であろう。地球は超多次元の複雑系であるから、絶えず新しいデータを追加し、理論的考察を加え、主成分解析を繰り返し行うべきである。)
更に温暖化対策の作成が急がれるもう一つの理由は、温暖化に基づく多くの自然現象が予想以上に急速に進行している事である。既に始まっている温暖化現象に対して適切な措置が一年おくれることは、今後人類社会全体にとって何兆ドルといったレベルの損害をもたらすことを示している。もしそれで国際貿易が停滞するようなことがあれば、資源小国日本が最も難渋するであろう、更に温暖化が進行し地球の自律作用が効かなくなれば、経済成長や雇用制度の改善など国内の政策事項どころか、全世界の安全と生存にかかわる問題に一変することも忘れてはならない。「化石エネルギー源を重視しつつ高い経済成長を実現する社会」は、二十一世紀末の平均気温が2.4~6.4度とIPCCが予測したが、平均4度の上昇では、スターン・レポートによると、アフリカの食料生産が15〜35%減少し、世界の海岸沿いで年間700万〜3億人が洪水の被害を受けるという。「化石エネルギー源を重視しつつ高い経済成長を実現する社会」の破綻は明らかで、EUを中心とする西欧諸国や米国のかなりの州では、2020年、2030年、2050年頃までを対象とする中長期的な温暖化対策のビジョンや大幅なCO2削減の目標値を示している。しかし、日本では、縦割り行政の弊害のために、長期的ビジョン不在の行政が続いている。
この機会に、昨年十一月二十一日、日本経済団体連合会が発表した「実効ある温暖化対策の国際枠組の構築にむけて」と題する意見書について触れておきたい。この意見書は時期的にはナイロビで開かれた気候変動枠組条約締結国及び京都議定書加盟国及び京都議定書加盟国(COP・MOP)の終了直後に発表されている。この経団連意見書は、ポスト京都の対応策の重要性を論じているが、残念ながら、日本として為すべき仕事、すなわち京都議定書の目標達成計画については態度が不明確である。今後の課題として、大量CO2排出国である米国、中国、インド等の排出削減乃至抑制を求めるのは当然でありその点に異論はない。しかし、京都議定書の実行期間の開始を目前に控えながら京都議定書の不公平性や議定書に定める具体的方策(例えば京都メカニズムなど)の欠陥をしてきするのに忙しく、京都議定書の公約を達成する決意とその外交的重要性が述べられていないのは残念である。
そもそも京都議定書は1992年のリオ環境サミットの際に採択された「気候変動枠組み条約」に基づく具体的措置の第一歩として、多くの妥協の結果作り上げられた当面の実行計画であり、条約に謳われている世界各国の「共通だが差異のある責任」をいかにして長期に渡りより合理的、実効的な形で実行していくかは、正にこれからの環境外交の重要課題である。もし日本がこれからも国際社会に於いて、国力にふさわしいリーダーシップを維持することを望むならば、政府、政党、企業、NGOなど、地球環境に関心を有するすべてのステークホルダー(利害関係者)が一致団結して世界に通用する政策ビジョンを確立する必要がある。
残念ながら、日本に於いてはまだこのビジョン作りが出来ていない。今回の首相の「環境立国戦略」は、この空白を埋めるものでなくてはならない。戦略作成の指示を受取った人々は、この点を充分理解して作業を進めて頂きたい。
又、経団連をはじめ産業界においても国際的なながれをしっかり読み取って、日本としての長期的ビジョンを含んだ行動計画作りに積極的に協力されることを期待したい。
(編集:海野)