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▼1 天文学のあらすじ
「この世」、あるいは宇宙を構成するものは、その性質が大きさにたいして、なんとなく似かよったところがあります。似かよった仲間たちを、階層(かいそう)とよびます。講義では、最大の階層である宇宙からはじめて、小さい階層へと順番に、その概要を記述することが多いです。宇宙のもよう(構造とよびます)は、ひとつ下の階層である銀河がつくっています。銀河のもようは、さらに下の階層である恒星がつくっています。
恒星の階層のひとつとして、私たちの太陽系があります。今回は、私たちの太陽系をみていきます。
▼2 太陽系とは
1 なじみのある星たち
宇宙空間のなかで、太陽系は、私たちがいちばんよく知っているところ(領域)です。太陽系のなかには、星の中でも、なじみのある星たちが、そろっています。
なかでも、ちょくせつ、星として全体を見ることができませんが、地球は、いちばん、なじみの深い星です。まあ、私たちが住んでいる星ですから、地球は特別です。地球以外にも、まだまだ、なじみのある星があります。
月と太陽です。どちらが、なじみがあるか、順番はつけられないほど、この2つは身近な星です。
月は、地球にいちばん近い星です。そして、人類が、はじめにたどりついた地球以外の星でもあります。月は、夜の明かりでもあり、潮(しお)のみちひきや、人間の体の調子やリズム(生理)にも影響を与えています。
太陽は、昼の明るさと、暖かさをあたえてくれます。そして、なんといっても、いちばんめだつ星であります。めだつというのは、見た目の大きさ、見た目の明るさのことです。大きさと明るさで、他の星たちとは、比べものにならないほど、太陽はめだっています。見かけの大きさでは、月と同じほどですが、明るさは比べものになりません。
2 日食
「見かけ」の大きさ、「見かけ」の明るさ、といういいかたをしました。「見かけ」というのは、地球から見たときのことです。
星の本当の明るさ(絶対光度といいます)では、太陽より明るい星は、私たちの銀河にはたくさんあります。しかし、地球から見たときの明るさは、遠い星ほど、暗くなります。ですから、目で見たとき、明るく見える星が、めだつわけです。
月は、明るいのですが、太陽よりは、けっして明るくなることはありません。なぜなら、太陽は、自分自身が輝(かがや)いているのたいし、月は、自分で輝くことなく、太陽の光を反射しているだけです。でも、反射だけでも、月は地球に近いので、夜空では、いちばん明るい星となります。
大きさについても同じように、遠くのものは小さく、近くのものは大きく見えます。ですから、地球にいちばん近い星である月は、大きく見えます。その大きさが、絶妙(ぜつみょう)で、地球から見かけの大きさが、太陽と月とで、ほぼ同じなのです。
その絶妙さが、日食(にっしょく)という天文ショウをうみだしています。日食とは、太陽が月とが重なって、太陽がつきのうしろにかくれてしまうことです。日食には、部分日食、皆既(かいき)日食、金環食(きんかしょく)(正式には金環日食とよばれます)とがあります。部分日食とは、太陽の一部だけがかくれるものです。皆既日食とは、太陽が月にすっぽりとかくれてしまうことです。金環食とは、太陽が月にかくれきれずに、すこし大きく見える場合です。やはり、日食の醍醐味(だいごみ)は、皆既日食と金環食でしょう。
なぜ、皆既日食と金環食とのちがいがおこるのかというと、太陽と月の地球からの見かけの大きさが、少しずつですが、変化しているのです。
日食は、太陽、月、地球が一直線にならんだときおこるものです。そのとき、太陽と月が同じ大きさに見えれば、皆既日食になり、太陽が大きく見えれば金環食になります。見かけの大きさがは、地球と月の距離と、地球と太陽の距離の関係で、少し変化しているため生じます。
地球と月の距離は、平均38万kmですが、1月間に変化します。それは、月が地球のまわりを回るコース(公転軌道といいます)が、完全な円ではなく、すこしつぶれた楕円になっています。半月間は平均距離より長く、残りの半月は短くなります。
いっぽう、地球と太陽の距離は、地球が太陽のまわりを回る公転軌道も楕円になっています。地球と太陽の平均距離は、約1.5億万kmですが、半年間は平均距離より長く、あとの半年間は短くなります。
地球−太陽と地球−月の距離の変化がおこるので、その組みあわせによって、金環食と皆既日食との違いがおこります。原理的には、太陽、月、地球が一列に並ぶことは、一月に一回、新月の正午ころにおこるはずです。しかし、微妙なずれのため、日食がきれいにおこることは、そんなに多くありません。また、月食は夜の地球ではどこでも見られるのですが、日食は、月の影にあたる地域でしか、みることができません。
さて、2003年には、日食が見られたでしょうか。金環食と皆既日食が1回づつみられました。金環食は、5月31日、グリーンランドからアイスランド付近です。皆既日食は、11月24日に、南極です。残念ながら、日本で去年は、見れませんでした。
では、日本はいつみれるのでしょうか。2009年7月22日に、奄美大島から種子島付近で、皆既日食がおこります。つぎは、2012年5月21日に東北北部と北海道をのぞく日本全国で金環食がおこります。

3 普通と個性
地球や太陽系で調べたことは、はたして、他のすべての太陽系(他の恒星がつくる惑星系)でもおこることなのでしょうか。私たちの太陽系だけのことと、どの太陽系にでも起こることを、はっきりと区別しておく必要があります。
これは、大切なことです。なぜなら、どの太陽系でもふつうにおこることならば、私たちの太陽系で、くわしく調べることができるのです。
また、私たちの太陽系だけのことであれば、その現象は、私たちの太陽系の個性となります。その個性が重要なものであるればあるほど、そして数がおおくなるればなるほど、私たちの太陽系は恒星という階層で特別なものとなっていきます。
先ほどの日食という天文ショウは、もちろん、私たちの太陽系だけの現象です。つまり、地球という視点で見たときにおこる現象で、非常に限られた(局所的)個性でもあります。では、このような日食は、太陽系、あるいは恒星という階層でどのような意味があるのでしょうか。たぶん、たいした意味がありません。
ところが、月が地球の衛星(えいせい)として、まわりを回っているということは、もしかしたら、重要な意味があるかもしれません。
もし、月の引力が地球におよぼす作用によって、生命が誕生したとしたら、どうなるでしょう。もしそうなら、月には、生命誕生には重要な役割があっとことを意味します。
生命の起源は、まだ完全にわかっていません。いつ、どこで、どのようにしてできたのかも、わかっていないのです。生命の起源の説の一つに、潮のみちひきの激しい干潟(ひがた)のようなところで誕生したというものがあります。この説が正しくて、潮のみちひきの激しい干潟で生命が誕生したとすると、どうなるるでしょうか。
他の惑星でも、生命が誕生するには、月のような大きさ衛星があることが、重要な条件となります。
日食という天文ショウは、恒星の階層へと広げることはできない、ささやかな個性でした。でも、生命の誕生に、衛星が、大切な役割をはたすとすると、衛星の存在は、生命がどんな星で誕生できるかへの重要な条件となります。
太陽系の性質で、もしどんな恒星系にでもあてはまることなら、それは充分知っておく価値があります。その性質は、恒星の階層では、普通のこと(普遍といいます)となります。もし、私たちの恒星、惑星や衛星が、ごくありふれたもので、生命の誕生にも、特別な材料や作用などが必要でないのなら、生命誕生すらありふれたことになります。
このようにある性質が、普遍的なものだということがわかれば、私たちの太陽系の性質を調べていけば、宇宙全体に適応できる詳しい研究ができるのです。
教訓 普遍と個性とを見分け、使い分けること
▼3 太陽系の仲間たち
1 惑星系とは、普遍か個性か
上では、太陽系といういいかたをして、それが、普遍か、個性か、という話をしました。恒星という輝く星は、銀河にはたくさんあることはわかっています。そして、さまざまなものがあることもわかっています。
ほんとうに、惑星がほかの恒星にもあるのでしょうか。もしなければ、太陽系で調べた惑星のデータは、すべて太陽系の個性になってしまうのです。
確かめるためのに、いちばん簡単な方法は、ほかの恒星を観測して、惑星があるかどうか調べればいいのです。
恒星は、遠くにあります。上でのべたように、星は、遠くなればなるほど、小さくなり、暗くなります。この効果は、輝かない星にとっては、離れると見えなくなるということを意味します。つまり、遠くの惑星は、なかなか見ることができないのです。
恒星の望遠鏡で、太陽からいちばん近い恒星をみても、直接、その近くにあるかも知れない惑星を見ることができません。何度か、発見の報告がありましたが、まちがいでした。しかし、天文学者は、さまざまなアイデアで、惑星があるかどうかを調べています。
いま、使われているものは、恒星のふらつきを調べる方法です。惑星が恒星のまわりを回るとき、恒星がふらついてみえます。ふらつくのは、惑星と恒星の物質の重心(じゅうしん)のまわりを、恒星もまわている(公転といいます)からです。恒星のふらつきを調べれば、惑星があるかどうかがわかるのです。
母星である恒星に、観測できるほどのふらつきをおこすには、大きな惑星でなければなりません。太陽系でいえば、いちばん大きな惑星である木星が、これにあたります。木星クラスの惑星を探すこと、つまり惑星系でいちばん大きな惑星を探すことが、最初の目標となります。
恒星のふらつきは、非常に小さな変化で、精度よく観測しなければなりません。ふらつきは、ドプラー効果を利用する方法が、いちばん精度よく調べられます。この方法で、1995年になって、はじめて、私たちの太陽系以外から、惑星が発見されました。最初は、たびかさなる誤報(ごほう)のひとつだろうと考えられました。しかし、いくつかの観測グループも、確かめることができたので、その報告は正しいことがわかりました。その後、2002年までに、80個ほどの惑星が発見されています。
ほかの恒星にも惑星があることがはっきりしたので、太陽系でえられた惑星に関する普遍的な特徴は、安心して、すべての太陽系に使うことができます。
2 太陽:太陽系の代表
太陽は、ありふれた恒星です。それは、いろいろな点からいえます。太陽は、宇宙では、
ごくありふれた銀河の中にいて、
ごくありふれたタイプの恒星であり、
ごくありふれた素材からでき、
ごくありふれた場所で形成された、
ことがわかっています。太陽には、特別なもの、個性的なものは、ほとんどみあたりません。
ありふれた恒星である太陽が、太陽系の中心にあります。太陽は、その位置だけでなく、太陽系の代表といえます。太陽系を遠くからながめると、太陽しか見えないのです。
太陽は、物質の量(質量といいます)では、太陽系の99.9%を持っています。ところが、不思議なことに、運動(角運動量といいます)は、太陽系の2%しかもっていません。つまり、運動は、惑星たちが、になっているのです。もちろん、惑星の運動は、つねに太陽の影響のもとにあります。
ものは太陽、運動は惑星たちという関係は、巨体力士の力と小兵力士のワザの関係にも似ています。(似ていない?)
3 惑星と衛星
私たちの太陽系の惑星や衛星を、密度(みつど)で見ていくと、いくつかのグループに分かれることがわかります。

密度の違いは、素材による違いであることがわかります。
太陽系の星は、素材として、
・岩石
・氷(固体H2O)
・固体水素
・水素ガス
のどれかを使っています。太陽系の天体の素材をみていくと、次のようになります。
岩石 氷 固体水素 水素ガス
太陽 − − − ○
水星 ○ − − −
金星 ○ − − −
地球 ○ − − −
火星 ○ − − −
木星 − ○ ○ ○
土星 − ○ ○ ○
天王星 − ○ − −
海王星 − ○ − −
冥王星 ○ ○ − −
(○:ある、−:ないか少ない)
惑星の素材の中でも、氷(固体のH2O)が、重要な働きをはたしています。H2Oは、温度が高いときは、気体の水蒸気になり、低いと氷、そのあいだの温度だと液体の水となります。太陽系の温度は、太陽からの距離によってきまります。

つまり、H2Oは、
太陽に近いと、気体
太陽からほどほどだと、液体
太陽から遠いと、固体
として存在することになります。
H2Oは、太陽系の材料としては、たくさんあったと考えられています。H2Oの固体を、惑星の材料として、たくさん集めることができた位置の惑星は、大きくなります。その結果、引力が強くなり、その強い引力で、太陽系の原料のおもな成分である水素ガスを、たくさんあつめることができました。ある大きさ以上になると、惑星の内部の水素は、気体や固体となっていきます。そして、星の密度が大きくなります。
大きな惑星のまわりにある衛星は、氷をおもな原料とし、岩石をともなったようなものからできています。
素材と太陽からの位置の違いが、それぞれの惑星の特徴を生んでいます。この性質は、他の恒星のどのような惑星系にもあてはまるはずです。

4 惑星
惑星には、上でのべた、H2Oの状態からつくられた2つのタイプがあることがわかります。鉄と岩石からできている惑星(地球型惑星とよばれます)と、ガスからできている惑星(木星型惑星)です。このようなタイプの違いは、他の惑星系でも見られると考えられます。
これから、それぞれの惑星や衛星の特徴をみてきますが、これは、太陽系の個性に属するものにあたります。
地球型惑星は、太陽から近い順位、水星、金星、地球、火星とならんでいます。そして、一つの惑星ではりませんが、火星と木星の間にある小さな惑星が多数ある小惑星帯あがあります。木星型惑星は、木星、土星、天王星、海王星です。そして、いちばん外に冥王星があります。
以下に、それぞれの惑星の特徴を、まとめて書いておきます。
水星:離心率と軌道傾斜角が大きい、大気がない
金星:厚い大気
地球:海洋と生命、大気、磁場、大きな衛星
火星:流水の跡、薄い大気
木星:太陽系最大の惑星
土星:明瞭なリング
天王星:自転軸(98°)が傾いている
海王星:密度が大きい(1.710 kg/m^3)
冥王星:離心率大、公転面の傾き大

5 そのほかの太陽系の仲間たち
太陽系には、惑星以外にも多くの仲間たちがいます。物質の量や、運動量からみると、ささいなものですが、太陽系に普遍的とみなされる特長をもっているものです。
多くの惑星には、衛星があります。衛星は、地球に1個(月)、火星に2個、木星に16個、土星に18個、天王星に15個、海王星に18個、冥王星に1個、あります。数は、個性にあたりますが、多くの惑星が衛星をもつということは、普遍的特長と考えてよさそうです。
木星型惑星には輪(リング)があります。輪は、木星に3本、土星に7本、天王星に11本、海王星に4本、みつかっています。輪の数は、個性ですが、多くの惑星が輪をもつということは、惑星系の普遍的特長と考えてよさそうです。
そのほかに、太陽系には、彗星(すいせい)があります。彗星で、太陽に近づくものは、尾をもち、そのかたちから、ほうき星ともよばれます。
惑星や衛星の間の空間には、彗星や惑星自身がまきちらしていった物質、分子、イオン(惑星間物質とよばれます)、あるいは、太陽から飛び出したイオン(太陽風とよばれます)があります。
ここでのべた太陽系の構成物も、多くの惑星系でみられる普遍的特徴だと考えられます。
6 太陽系の天体は、個性がそれぞれある
太陽系の天体は、さまざまな見かけ、特徴、つまり個性を持ちます。しかし、その個性を生んだ、しくみは、あんがい単純であり、特別な作用は必要としません。
教訓 個性は、単純な原理でうまれる
ということは、個々の個性も、ある普遍的な規則によって説明できるということです。
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掲示板: 最新情報
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・最新情報・
これから述べることは、重要です。
太陽系以外の惑星の発見は、1995年10月6日、イタリア、フィレンツェの学会で発表されました。マイヨールとケロズという天文学者が発見者でした。
ペガサス座51番星から、その惑星は見つかりました。発見された惑星は、じつは、とんでもないものでした。大きさは、木星クラスですが、その公転軌道と運動が、私たちの太陽系からは、予想できないものでした。
なんと、水星よりもっと太陽に近いところ(750万km)を、4.2日というすごいスピードでまわっている惑星だったのです。
私たちが、普遍的と考えている太陽系では、巨大な惑星は、太陽から遠いところにでき、ゆっくりと回っているはずでした。ですから、この報告も、最初は、まちがいと考えられていました。現在、この惑星は多くの天文学者が調べて、正しいことが確認されています。
この第一発見の惑星だけが、私たちの太陽系とは違った、特別だったのでしょうか。じつは、そうでもなさそうなのです。惑星の大きさには、さまざまなものが見つかっています。地球の50倍から6分の1の惑星が、発見されています。
そのうち、4分の1は、恒星のすぐ近くを、数日でまわる巨大ガス惑星なのです。太陽に近いため、ガスでできた惑星、爆発寸前の惑星と考えられています。そんな惑星を「熱い木星(Hot
Jupiter)」とよんでいます。
私たちの太陽系では、惑星の楕円軌道は、円に近いものです。しかし、発見された惑星は、3分の2は、つぶれた楕円軌道、つまり、太陽に近いところと遠いところの差が大きい軌道をまわっています。
また、複数の惑星があることもわかっています。
もちろん、太陽系と似た惑星もみつかっています。恒星からある程度離れたところで、円に近い軌道をもっているものです。しかし、その数は、発見されている惑星の10分の1しかありません。
ある人は、このような多様な惑星を称して「惑星の動物園(planet zoo)」と言いました。
さて、私たちの太陽系は、普遍的存在のでしょうか。このような観測結果を見せつけられると、疑問がわいてきます。観測された多様な惑星を、私たちの太陽系の形成のモデルから、初期条件の違いや、モデル修正で、導き出せるでしょうか。もし、できるなら、モデルは安泰です。もしできなければ、別のモデルが必要で、教科書を書き換える必要があります。
現在、新しいデータを加味して、モデルを検討中です。
観測から、多様性は、だいぶ、わかってきました。あとは、多様性の定量的な許容範囲(惑星の大きさ、軌道や周期の範囲など)がきめられ、タイプごと比率を決める段階と、なっています。
観測データで、惑星の多様性がある程度わかり、どの程度がどのタイプになるかということが決まれば、モデル競争にも、決着をみるはずです。それには、あと少し、時間がかかりそうです。なかなか目が離せません。でも、科学は、本当に面白いですね。
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