講 義:  恒星がたどる一生
 

3 星の安定期:太陽は一定の明るさで燃え続ける
 太陽の誕生まで、話は進みました。これからは、安定した太陽が、いかにして輝いているかという仕組みについてです。

1 星の分類
 まず、星の分類です。現在、輝いている星は、大きく分けると、2つのタイプがあります。それは、化学成分による分類です。
 2つのタイプは、種族Iと種族II、とよばれています。
 星の光を分析することによって、その星にはどんな成分(元素)がふくまれているかを、調べることができます。星が発する光による分析を、スペクトル分析といいます。種族Iの星は、星の光の中に重い金属元素がふくまれているもので、種族IIの星は、重い金属元素がはっきりしないものです。
 種族Iは、私たちの太陽が属するタイプのありふれた星で、年齢が若いものが多くなっています。一方、種族IIの星は、数も少なく、赤色巨星や超巨星など、年をとった星が多いのが特徴です。
 宇宙ができてあまり時間がたっておらず、宇宙に水素とヘリウムしかないときにできた星が、種族IIだと考えられています。ですから、できてから長い時間がたっているので、年老いた星が多いのです。種族Iの星は、宇宙ができてだいぶ時間がたって、重い元素も宇宙でじゅうぶんできてから、生まれた星だと考えられています。だから、若い星が多いのです。
 種族Iの星は銀河のディスクを、種族IIの星は銀河のハローを構成しています。また、種族Iの星は散開星団をつくり、種族IIの星は、球状星団をつくります。
 星は、温度や特徴的な成分、星のガスに圧力などによって、細かく分けられていきます。
 温度によって、星の色が違ってきます。温度の高い星(10,000度以上)は青く、温度の低い星(5,000度)は赤くみえます。星にふくまれる元素の特徴(輝線スペクトルによるスペクトル型)で、下の表でしますように、アルファベットによる名前のついた10種類に分けられて、さらにそれぞれが、0〜9までの数字をつけることによって、10段階にわけられています。

表 星の分類
スペクトル型 表面温度  スペクトルの種類
O       80,000K  He+;高次電離O+、N+線
B       20,000K  He線;電離O+、N+線
A       10,000K  H線;電離金属
F        7,000K  AとGの中間;Ca+線
G        6,000K  中性金属吸収線;最強のCa+線
K        4、200K  GとMの中間;Ca、CH、CN線
M        3、000K  TiO分子線;Ca線、各種分子線
R        3、000K  ZrO分子線
N        3、000K  C2分子線
S        3、000K  ZrO、YO、LuOの分子線

 星のガスの圧力によって、元素の発する光(スペクトル)の幅が、変わります。それをもとにして星を分類する方法を、光度階級とよんでいます。光度階級は、IからVIIに細分され、それぞれの星の特徴は、下の表のようになります。

表 光度階級
I :超巨星(Ia明るい超巨星、Ibそれほど明るくない超巨星)
II :明るい巨星
III :普通の巨星
IV :準巨星(巨星と主系列星の中間の星)
V :矮星(主系列星)
VI :準矮星(主系列星より1.5等級ほど暗い星)
VII :白色矮星

 ちなみに、わたしたちの太陽は、種族Iで、重い元素を含み(重元素/H 比は 0.02)で、G2型というスペクトル型で、光度階級Vです。それは、ありふれた星であることをしめしています。


2 HR図
 星の種類は、特徴によって、まとめられていました。でも、そのままでは、まだ、帰納法が完成していません。なんらかの法則を、みちびき出さなければなりません。
 その方法の一つとして、図でしめすというやりかたがあります。つまり、分類ごとの特徴から、系統性や規則性をみつけだし、そこから、法則をみちびこうというやりかたです。科学では、図やグラフはよく使われます。これだけでは、法則が、本当の法則(普遍的なもの)かどうかわかりません。そこで、活躍するのが、演繹法です。その法則を、みちびきだした例(この場合は観測された星)以外のもの(あたらに観測された星)にも、適用してみて合っているかどうかを、調べればいいのです。もし合っていれば、その法則は、より正しいものといえます。星の規則性は、そのようにして確立されていきました。
 星の分類を、図であらわす方法として、HR図というものがあります。この図の原理は、1905年にHertsprungが考え、1913年にRussellが図に示したものです。2人の名前をとって、Hertsprung-Russell図、略してHR図とよばれています。1950年代になり、星の進化と構造が、この図であわされることがわかってきました。
 HR図には、さまざま表示方法があります。
 よこ軸:有効温度、スペクトル型、表面温度、色指数、色温度
 たて軸:光度、絶対等級
です。でも、どれも、目盛(めもり)を、うまくつけると、にたような特徴の図になります。
 たとえば、よこ軸に星の温度(左ほど温度が高く、右ほど温度が低い)をとり、たて軸に光度(上が明るい、下が暗い)という図を考えます。その軸を使って、星のデータを入れていきますと、ほとんどの星が、左上から、右下のところ(図の主系列星)にならんでいきます。


 星がたくさん列をなしているので、列を主系列と言い、そこにある星を主系列星といいます。星のほとんど(92%)が、主系列星になります。

 HR図で、大きい星は左上で、小さい星は右下になります。星の中心の温度でみると、4倍ほどになっています。表面の温度でみると、熱い星と冷たい星との温度は、10倍ほどです。星の半径と物質の量(質量といいます)の比では、30倍ほど違いがあります。
 ところが、光度でみると、明るいの星と暗い星では、最大で1億倍ほどの差があります。物質量や温度の差に比べて、光度には大きな違いがあるという、ふしぎな関係があるようです。
 星の物質量と半径は、星のなかの温度に、ほぼ比例します。これは、主系列星の内部では同じ種類の熱発生のしくみが、はたらいており、それは、核反応によるものだと考えられています。つまり、水素の核融合が、星の内部では、おこっていることをしめしています。

3. 星のエネルギー
 核融合とは、どのようなものでしょうか。星でいちばんおおい成分は、水素(H)です。水素原子は、ものすごいいきおいでぶつかると、より重い、安定した元素であるヘリウム(He)になることがあります。このような現象を、核融合といいます。つまり、水素原子からヘリウム原子ができる反応です。
 いくつかのプロセス(p-p反応、C-N反応とよばれています)がありますが、どの反応も、4個の水素原子から1個のヘリウム原子を合成する反応になります。
 そこには、いっけん、なんの問題ないようですが、水素4個分と、ヘリウム1個分の重さを比べてみると、ヘリウムのほうが、やや軽くなっています。減ったぶんの重さ、つまり物質は、どこにいったのでしょうか。
 それを解く答えが、アインシュタインの
E=mc^2
という式です。
 この式の意味するところは、物質(式ではmで質量)が、ある定数倍(式では光速2乗)で、エネルギーに変わるというものです。
 水素4個と、ヘリウム1個での、物質量の差で、計算してみると、反応1個あたり、
4.4×10^-5 erg
というエネルギーが放出されます。ergというのは、エネルギーの単位です。でもこれでは、よくわかりませんので、もう少しわかりやすい例を出しましょう。
 1gの水素が、核融合にすべて使われると、
6×10^11 cal
のエネルギーを出します。まだわかりませんよね。
 では、600tの水を用意したら、0℃から100℃まで上昇させることができる、という例はどうでしょう。つまり、50mプールの水を、たった1gの水素の核融合で、沸騰させることができるのです。
 また、この反応のエネルギーをもとにして、太陽の寿命も計算できます。
 天気のいい日に、日光の量を正確に観測すれば、太陽から、地球にふりそそぐ光の量がわかります。地球の軌道半径に、いま観測した量の太陽はエネルギーが、まんべんなくふりそそいであるのです。ですから、太陽を中心とする地球の半径の球の表面積を計算すれば、太陽は、どの程度のエネルギーを出しているかわかります。
 現在の太陽は、毎秒、
3.8×10^33 erg
のエネルギーを出していることがわかりました。
 すると太陽の水素量から、今の状態でエネルギーをだしていると、どれくらいの時間で、水素を使いつくされるかが計算できます。
 その結果、太陽の寿命は、約100億年と計算されました。太陽系は、約45億年前にできましたから、あと50年くらいは、太陽は核融合できることになります。

4. 個をよく知ることから、他もよく知ることができる
 星の内部の核融合を調べるには、太陽がいちばん近くて、役に立つ標本となります。上でのべた星の仕組みの解明には、太陽が重要な見本となっていました。
 さいわいにも、私たちの太陽は、主系列星のごくありふれた星だったので、他の多くの星も、太陽と同じような仕組みであろうと予想できます。
 私たちの太陽が、多くの星に中で、どのようなタイプの星で、そのタイプはそれぐらいの量があるかがわかっているおかげで、ほかの星の仕組みも知ることができました。
 このように、「他」への適用をする時、自分自身が、多数の集団の中で、どのような位置にいるに注意すれば、「個」から見つけだした規則を、「他」へ適用することができます。さらに、1個の「個」でも、「質」をよくしらべれば、「多数」への応用ができるのです。

― 質は量を生む ―


4 星の死:太陽は明るくなって燃え尽きて死んでいく
1. 星のバランスと元素合成
 核融合の反応とは、エネルギーを放出することです。反応によって、星が広がろう(膨張といいます)とします。一方、星は物質の量(質量)におうじた引力(重力)で、縮もう(収縮といいます)とします。
 この膨張と収縮との力のつりあいが、星の大きさを決めるのです。星のもっている物質量(質量)におうじて、星の性質が決まるということになります。
 いったん安定した核融合がはじまりますと、その状態は非常に安定しています(力学的平衡状態といいます)。その状態は、核融合の反応がおわるまでつづきます。
 主系列星のエネルギーのみなもとである核融合は、星の物質量(質量)が多いほど、重い元素の融合反応が起こります。
 大きな星の内部は、より高温になり、高温になると重い元素でも、核融合がおこります。水素の核融合がいちばん効率がいいのですが、重い元素は燃えにくく、発生エネルギーも少なく、効率の悪いものです。星の質量が増えるとともに、エネルギーの発生の効率の悪い、重い元素の核融合もおこります。
 でも、どんな元素でも、核融合でエネルギーをだすわけではありません。あまりにも重い元素では、エネルギーを与えないの核融合できません。核融合でエネルギーを出すのは、鉄の元素までです。星の中で、エネルギーを出す、つまり「もえる」元素は、鉄までです
 大きな星の中心には、鉄の層ができ、外に向かってネオン・マグネシウム・ケイ素の層、炭素・酸素の層、ヘリウムの層、そして一番外側に水素の層というつくりができます。大きな星では、元素の成分の違う層がたくさんできる、多層構造となります。

2. 星の最後
 物質量(質量)の多い星ほど、エネルギーを多く発生して、つまり核反応がはやく進みます。大きな星は、はやく燃えつきるのです。燃えつきると、星はどうなるのでしょうか。それは、星の死を調べることです。
 主系列星で、水素からヘリウムへの核融合反応が終わると、星はエネルギーの放出がへり、重力が勝ちます。そして、収縮していきます。
 大きな星では、収縮によって、つぎの核反応であるヘリウムを利用した核融合が中心にあっていいきます。物質量(質量)におうじて、より重い(質量数の大きい)元素の核融合へとすすんでいきます。
 水素からヘリウムの核融合に比べ、重い元素の出するエネルギーは少なくなります。核融合のエネルギーの変化によって、星は不安定になります。エネルギーによる膨張の力と重力による収縮のバランスがくずれます。その不安定さによって、星全体が膨張していきます。
 核融合によるエネルギーが減っているのに、膨張するため、星の温度は下がっていきます。つまり、赤くて大きい星になります。このような星は、赤色巨星といいます。
 赤色巨星の大きさは、星の質量によってちがいますが、ここまではどの星もたどる運命です。
 ここから、先は、星の物質量(質量)に応じて、運命が変わっています。
 太陽の重さ(質量)の0.08以下の星は、水素の核融合をおこさず、暗くて見えないような低温で、褐色矮星(かっしょくわいせい)とよばれ、ひじょうにたくさんの数があると考えられています。しかし、よく見えないので、その量はわかっていません。
 太陽の重さ(質量)の 0.08 〜 0.45 倍の星は、すべて、水素の核融合をおこします。しかし、エネルギー発生は少なく、つまり核合成のスピードが遅く、寿命(じゅみょう)の長い褐色矮星となります。さいごには、ヘリウムの多い白色矮星となります。
 小さい星は、1,000億年以上の寿命をもつものもあるとされています。つまり、宇宙の誕生時に生まれたものがあるとすると、まだ、生き残って、それも、寿命の10分の1ほどしかまだ、生きていないというような星もあります。
 太陽の重さ(質量)の0.45 〜 8 倍の星では、収縮がおこり、重い元素(炭素と酸素)が、中心にできて、成長するにつれて、炭素の核融合反応が抑制がきかなくなり(熱暴走といいます)、爆発します。
 このとき、星をつくっていた物質は、飛びちってしまいます。このような爆発を超新星爆発(I型)といいます。
 I型の超新星爆発では、爆発によって物質が膨張をつづけると、中心にある星の重力は、外のガスへの影響はへっていきます。最後には、ガスが、中心の星からはなれて、星雲状のガスになります。これを、惑星状星雲といいます。

 惑星状星雲は、広がりつづけ、まわりの星間ガスとなっていき、やがて見えなくなります。星間物質として放出されたガスは、次の星の材料として、めぐっていきます。
 中心に残こった星の温度は、数万度の高温になり、白く見えます。このような星は、非常に小さいため白色矮星とよばれます。白色矮星はエネルギーを使いはたしており、あとは冷えるだけです。やがて、温度が下がり、赤色矮星から黒色矮星となり、輝かなくなります。つまりは、星として、死を迎えるのです。
 太陽の重さ(質量)の7〜8倍の星は、もっと激しい超新星爆発(炭素爆燃型とよばれます)をおこします。この超新星爆発では、星全体が吹き飛ぶと、考えられています。

 太陽の重さ(質量)の8倍以上の星では、やはり、超新星爆発(II型という)がおきます。II型の超新星爆発は、渦巻銀河だけで発生します。
 II型の超新星爆発では、星のほとんどの物質が、とびちってしまうのですが、中心部に、中性子星とよばれる芯(しん)が残ります。
 中性子星の自転軸の両極付近から、電波やX線(放射線)などが出てきます。中性子星の回転の半径内に地球があると、放射線は、パルス状になって見えます。このような強烈なパルスをだす星を、パルサーとよんでいます。
 太陽の重さ(質量)の40倍以上の質量の星も、II 型の超新星爆発を起こします。中心では、重力が中性子の反発力に勝ち、止めどもなく、つぶれていきます(重力崩壊といいます)。その星からは、光もぬけでることができないブラックホールとなります。

3. 重い元素の合成
 大きな星は、エネルギー消費量が多く、寿命が短かくなります。大きな星の中では、核融合反応で、鉄ができるまで、つづきます。
 鉄より重い元素が、星の寿命の最後にできます。
 超新星爆発のとき、衝撃波が星の内部を通過すると、急激に温度が上昇し、激しい核反応がおきます。もちろん、エネルギーはすきなだけ使えるほどあります。
 そのようなはげしいエネルギーのなかでは、さまざな核反応がおこります。その反応で、無数の中性子がひびかいます。ある中性子は、他の原子核にはいりこみます。つまり、原子核を重くします。これが、くりかえされて、つぎつぎと、鉄より重い元素が合成されていきます。
 これが、超新星爆発のときのほんの短い時間におこなわれるのです。星のさいごの大仕事が、鉄より重い元素を合成することなのです。
 星の中で、鉄までの元素はできます。鉄より重い元素は、星が超新星爆発で死ぬときに合成されます。これで、宇宙を構成してる元素の起源(きげん)が、すべてあきらかにありました。

4. 太く短くか、細く長くか
 星が一生のうちに出すエネルギーは、星の一生ほど、違いが大きくありません。星は、大きい星ほど、激しく、そして早く燃え尽き、小さいものは、弱く、しかし、長く燃えつづけます。
 動物でも、ゾウは長生きですが、心臓の打つスピード(鼓動(こどう)といいます)はゆっくりしています。ネズミは寿命が短いのですが、鼓動は早くうちます。一生のうちに心臓が活動する回数は、おきな違いがないといわれています。(不思議な類似点ですね)


 

 

 

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