太陽系の普遍と個性
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 [普通と個性]
 地球や太陽系で調べたことは、はたして、他のすべての太陽系でもおこることなのでしょうか。私たちの太陽系だけのことと、どの太陽系にでも起こることを、はっきりと区別しておく必要があります。
 これは、大切なことです。なぜなら、どの太陽系でもふつうにおこることならば、私たちの太陽系で、くわしく調べることができるのです。
 また、私たちの太陽系だけのことであれば、その現象は、私たちの太陽系の個性となります。その個性が重要なものであるればあるほど、そして数がおおくなるればなるほど、私たちの太陽系は恒星という階層で特別なものとなっていきます。
 日食という天文ショウは、もちろん、私たちの太陽系だけの現象です。つまり、地球という視点で見たときにおこる現象で、非常に限られた(局所的といいます)個性でもあります。では、このような日食は、太陽系、あるいは恒星という階層でどのような意味があるのでしょうか。たぶん、たいした意味がありません。
 ところが、月が地球の衛星として、まわりを回っているということは、もしかしたら、重要な意味があるかもしれません。
 
 太陽系の性質で、もしどんな星にでもあてはまることなら、それは充分知っておく価値があります。その性質は、恒星の階層では、普通のこと(普遍ともいいます)となります。もし、私たちの恒星、惑星や衛星が、ごくありふれたもので、生命の誕生にも、特別な材料や作用などが必要でないのなら、生命誕生すらありふれたことになります。
 このようにある性質が、普遍的なものだということがわかれば、私たちの太陽系の性質を調べていけば、詳しい研究ができるのです。

教訓 普遍と個性とを見分け、使い分けること

[太陽系の仲間たち]
1 惑星系とは、普遍か個性か
 上では、太陽系といういいかたをして、それが、普遍か、個性か、という話をしました。恒星という輝く星は、銀河にはたくさんあることはわかっています。そして、別に述べたように、さまざまなものがあることもわかっています。
 ところが、恒星系、つまり惑星があるかどうかについては、なにものべませんでした。ほんとうに、惑星がほかの恒星にもあるのでしょうか。もしなければ、太陽系で調べた惑星のデータは、すべて太陽系の個性になってしまうのです。
 確かめるためのに、いちばん簡単な方法は、ほかの恒星をみて、惑星があるかどうか調べればいいのです。
 恒星は、遠くにあります。上でのべたように、星は、遠くなればなるほど、小さくなり、暗くなります。この効果は、輝かない星にとっては、離れると見えなくなるということを意味します。つまり、遠くの惑星は、なかなか見ることができないのです。
 恒星の望遠鏡で、いちばん近い恒星をみても、直接、惑星をみることができません。何度か、発見の報告がありましたが、まちがいでした。しかし、天文学者は、さまざまなアイデアで、惑星があるかどうかを調べています。
 いま、使われているものは、恒星のふらつきを調べる方法です。惑星が恒星のまわりを回るとき、恒星がふらついてみえます。ふらつくのは、惑星と恒星の物質の重心(じゅうしん)のまわりを、恒星もまわている(公転といいます)からです。恒星のふらつきを調べれば、惑星があるかどうかがわかるのです。
 母星である恒星に、観測できるほどのふらつきをおこすには、大きな惑星でなければなりません。太陽系でいえば、いちばん大きな惑星である木星が、これにあたります。木星クラスの惑星を探すこと、つまり惑星系でいちばん大きな惑星を探すことが、最初の目標となります。
 恒星のふらつきは、非常に小さな変化で、精度よく観測しなければなりません。ふらつきは、ドプラー効果を利用する方法が、いちばん精度よく調べられます。この方法で、1995年になって、はじめて、私たちの太陽系以外から、惑星が発見されました。最初は、たびかさなる誤報のひとつだろうと考えられました。しかし、いくつかの観測グループも、確かめることができたので、その報告はただしいことがわかりました。その後、2002年までに、80個ほどの惑星が発見されています。
 ほかの恒星にも惑星があることがはっきしたので、太陽系でえられた惑星に関する普遍的な特徴は、安心して、すべての太陽系に使うことができます。

2 太陽:太陽系の代表
 太陽は、ありふれた恒星です。それは、いろいろな点からいえます。太陽は、宇宙では、
ごくありふれた銀河の中にいて、
ごくありふれたタイプの恒星であり、
ごくありふれた素材からでき、
ごくありふれた場所で形成された、
ことがわかっています。太陽には、特別なもの、個性的なものは、ほとんどみあたりません。
 ありふれた恒星である太陽が、太陽系の中心にあります。太陽は、その位置だけでなく、太陽系の代表といえます。太陽系を遠くからながめると、太陽しか見えないのです。
 太陽は、物質の量(質量といいます)では、太陽系の99.9%を持っています。ところが、不思議なことに、運動(角運動量(かくうんどうりょう)といいます)は、太陽系の2%しかもっていません。つまり、運動は、惑星たちが、担っているのです。もちろん、惑星の運動は、つねに太陽の影響のもとにあります。
 

3 惑星と衛星
 私たちの太陽系の惑星や衛星を、密度(みつど)で見ていくと、いくつかのグループに分かれることがわかります。

 密度の違いは、素材による違いであることがわかります。
 太陽系の星は、素材として、
・岩石
・氷(固体H2O)
・固体水素
・水素ガス
のどれかを使っています。太陽系の天体の素材をみていくと、次のようになります。

    岩石 氷 固体水素 水素ガス
太陽  −  −  −    ○
水星  ○  −  −    −
金星  ○  −  −    −
地球  ○  −  −    −
火星  ○  −  −    −
木星  −  ○  ○    ○
土星  −  ○  ○    ○
天王星 −  ○  −    −
海王星 −  ○  −    −
冥王星 ○  ○  −    −
(○:ある、−:ないか少ない)

 惑星の素材の中でも、氷(固体のH2O)が、重要な働きをはたしています。H2Oは、温度が高いときは、気体の水蒸気になり、低いと氷、そのあいだの温度だと液体の水となります。太陽系の温度は、太陽からの距離によってきまります。

 つまり、H2Oは、
太陽に近いと、気体
太陽からほどほどだと、液体
太陽から遠いと、固体
として存在することになります。
 H2Oは、太陽系の材料としては、たくさんあったと考えられています。H2Oの固体を、惑星の材料として、たくさん集めることができた位置の惑星は、大きくなります。その結果、引力が強くなり、その強い引力で、太陽系の原料のおもな成分である水素ガスを、たくさんあつめることができました。ある大きさ以上になると、惑星の内部の水素は、気体や固体となっていきます。そして、星の密度が大きくなります。
 大きな惑星のまわりにある衛星は、氷をおもな原料とし、岩石をともなったようなものからできています。
 素材と太陽からの位置の違いが、それぞれの惑星の特徴を生んでいます。この性質は、どのような惑星系にもあてはまるはずです。

4 惑星
 惑星には、上でのべた、H2Oの状態からつくられた2つのタイプがあることがわかります。鉄と岩石からできている惑星(地球型惑星とよばれます)と、ガスからできている惑星(木星型惑星)です。このようなタイプの違いは、他の惑星系でもみらると考えられます。
 これから、それぞれの惑星や衛星の特徴をみてきますが、これは、太陽系の個性に属するものにあたります。
 地球型惑星は、太陽から近い順位、水星、金星、地球、火星とならんでいます。そして、一つの惑星ではりませんが、火星と木星の間にある小さな惑星が多数ある小惑星帯あがあります。木星型惑星は、木星、土星、天王星、海王星です。そして、いちばん外に冥王星があります。
 以下に、それぞれの惑星の特徴を、まとめて書いておきます。
 水星:離心率と軌道傾斜角が大きい、大気がない
 金星:厚い大気
 地球:海洋と生命、大気、磁場、大きな衛星
 火星:流水の跡、薄い大気
 木星:太陽系最大の惑星
 土星:明瞭なリング
 天王星:自転軸(98°)が傾いている
 海王星:密度が大きい(1.710 kg/m^3)
 冥王星:離心率大、公転面の傾き大

5 そのほかの太陽系の仲間たち
 太陽系には、惑星以外にも多くの仲間たちがいます。物質の量や、運動量からみると、ささいなものですが、太陽系に普遍的とみなされる特長をもっているものです。
 多くの惑星には、衛星があります。衛星は、地球に1個(月)、火星に2個、木星に16個、土星に18個、天王星に15個、海王星に18個、冥王星に1個、あります。数は、個性にあたりますが、多くの惑星が衛星をもつということは、普遍的特長と考えてよさそうです。
 木星型惑星には輪(リング)があります。輪は、木星に3本、土星に7本、天王星に11本、海王星に4本、みつかっています。輪の数は、個性ですが、多くの惑星が輪をもつということは、惑星系の普遍的特長と考えてよさそうです。
 そのほかに、太陽系には、彗星があります。彗星で、太陽に近づくものは、尾をもち、そのかたちから、ほうき星ともよばれます。
 惑星や衛星の間の空間には、彗星や惑星自身ががまきちらしていった物質、分子、イオン(惑星間物質とよばれます)、あるいは、太陽から飛び出したイオン(太陽風とよばれます)があります。
 ここでのべた太陽系の構成物も、多くの惑星系でみられる普遍的特徴だと考えられます。

6 太陽系の天体は、個性がそれぞれある
 太陽系の天体は、さまざまな見かけ、特徴、つまり個性を持ちます。しかし、その個性を生んだ、しくみは、あんがい単純であり、特別な作用は必要としません。

― 個性は、単純な原理でうまれる ―

 ということは、個々の個性も、ある普遍的な規則によって説明できるということです。

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 これから述べることは、重要です。本当は、講義の中でのべるべきだったのかしれませんが、まだ、確定されてないこともたくさんあるので、掲示板でのべることにしました。
 太陽系以外の惑星の発見は、1995年10月6日、イタリア、フィレンツェの学会で発表されました。マイヨールとケロズという天文学者が発見者でした。
 ペガサス座51番星から、その惑星は見つかりました。発見された惑星は、じつは、とんでもないものでした。大きさは、木星クラスですが、その公転軌道と運動が、私たちの太陽系から、予想できないものでした。
 なんと、水星よりもっと太陽に近いところ(750万km)を、4.2日というすごいスピードでまわっている惑星だったのです。
 私たちが、普遍的と考えている太陽系では、巨大な惑星は、太陽から遠いところにでき、ゆっくりと回っているはずでした。ですから、この報告も、最初は、まちがいと考えられていました。現在、この惑星は多くの天文学者が調べて、正しいことも確認されています。
 この第一発見の惑星だけが、私たちの太陽系とは違った、特別だったのでしょうか。じつは、そうでもなさそうなのです。惑星の大きさには、さまざまなものが見つかっています。地球の50倍から6分の1の惑星が、発見されています。
 そのうち、4分の1は、恒星のすぐ近くを、数日でまわる巨大ガス惑星なのです。太陽に近いため、ガスでできた惑星、爆発寸前の惑星と考えれられています。そんな惑星を「熱い木星(Hot Jupiter)」とよんでいます。
 私たちの太陽系では、惑星の楕円軌道は、円に近いものです。しかし、発見された惑星は、3分の2は、つぶれた楕円軌道、つまり、太陽に近いところと遠いところの差が大きい軌道をまわっています。
 また、複数の惑星があることもわかっています。
 もちろん、太陽系と似た惑星系もみつかっています。恒星からある程度離れたところで、円に近い軌道をもっているものです。しかし、その数は、発見されている惑星の10分の1しかありません。
 あるひとは、このような多様な惑星系を称して「惑星の動物園(planet zoo)」といいました。
 さて、私たちの太陽系は、普遍的存在のでしょうか。このような観測結果を見せつけられると、疑問がわいてきます。観測された多様な惑星を、私たちの太陽系の形成のモデルから、初期条件の違いや、モデル修正で、導き出せるでしょうか。もし、できるなら、モデルは安泰です。もしできなければ、別のモデルが必要で、教科書を書き換える必要があります。
 現在、新しいデータを加味して、モデルが検討中です。
 観測から、多様性は、だいぶ、わかってきました。あとは、多様性の定量的な許容範囲(惑星の大きさ、軌道や周期の範囲など)がきめられ、タイプごと比率を決める段階と、なっています。
 観測データで、惑星の多様性があるていどわかり、どの程度がどのタイプになるかということが決まれば、モデル競争にも、決着をみるはずです。それには、あと少し、時間がかかりそうです。なかなか目が離せません。でも、科学は、本当に面白いですね。
 この講義では、従来の見解で話を進めています。


 

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